世界の産業動向 Aug-Sept., 20172018/07/17

 

世界の産業動向

Aug-Sept., 2017

1.     情報通信産業

Ø  5Gの発展がRFパワーデバイス部品の需要増をけん引

 RFフロントエンド(RF Front End)チップは、5G技術の成熟に伴って市場に新たなビジネスチャンスをもたらし、今後RFパワーアンプ(RF PA)の需要が持続的に伸びると予想される。その中で従来型の金属酸化半導体プロセスは窒化ガリウム(Gallium Nitride, GaN)に段階的に置き換わることになる。特に5G技術の下ではより多くのデバイス、より高い周波数をサポートする必要があり、その一方でヒ化ガリウム(GaAs)は相対的に安定して成長すると見込まれる。

 新たなRF技術の導入により、RFパワーアンプ(RF PA)は新たなプロセス技術で実現され、このうち窒化ガリウムGaNRF PAは出力3W以上の主流プロセス技術となる。

Ø  モバイルVRデバイスの発展

 モバイルVRデバイスは、2015年から多くのメーカが出現し始めており、低コスト戦略を取り、消費者に目新しさを訴えることで利益獲得を目指しているが、産業全体としてはいまだ発展の途上にある。Googleは、2016年にDaydreamプラットフォームをリリースし、モバイルデバイス産業の提携パートナーとともにVRエコシステムを構築することで、より多くの製品とアプリケーションに進出しようとした。しかし、結果は予想を下回り、モバイルVR市場が冷え込む状況を招いた。

 メーカのソフトウェア・ハードウェアへの資源投入があまりに少なく、製品の類似性が高すぎる上、消費者の体験も芳しくなかったことが主因である。この状況を改善するには、メーカが外装の材質を改善するとともに、エルゴノミクス設計を強化し、コスト圧縮にこだわりすぎないことが必要である。ただ、新しい設計はデバイス価格の上昇につながる可能性があり、100米ドル前後の価格帯になることが予想される。また、GoogleDaydream規範基準を下げなければ、Daydreamをサポートするデバイスを急速に増加させることはできない。

2.     医療バイオテクノロジー産業

Ø  がん治療薬の最新の発展トレンド

 今年、アメリカ臨床腫瘍学会(American Society of Clinical OncologyASCO)の年次総会で最も多く議論された薬物はnivolumabpembrolizumabbevacizumabipilimumabtrastuzumabdurvalumabpaclitaxelcisplatingemcitabinecarboplatinであり、適応症は乳がん、肺がん、大腸直腸がん、胃腸管腫瘍、白血病、悪性黒色腫、前立腺がん、頭頚部がん、骨髄腫、卵巣がん等を主とする。

 注意すべき重点としては、さらに以下が挙げられる。1.複数種のIOを組み合わせる療法が登場し、実際の長期的効果が徐々に明らかになると予想される。2.がん治療の高額化傾向が強まっており、新薬による1人当たりの毎年の治療コストは10万米ドルを超え、今後は臨床の意思決定の角度からがん治療の経済負担を軽減する方策を検討することになるだろう。3CAR-T療法はその実現に向けた取り組みが続いており、開発メーカのKiteNovartisCAR-T製品のアメリカでの上市申請を既に提出している。4.遺伝子シーケンシングは、がん治療薬の開発においてその重要性をさらに増し、将来的には遺伝子シーケンシングの運用が開発と投与対象グループのスクリーニングにおいて常態化すると見込まれる。

3.     フィンテック産業

Ø  国内の第三者支払い取引で携帯電話の指紋識別を導入へ

 現在、国内の電子決済機構(第三者支払いともいう)に対する取引安全設計規範では、取引額に基づいて4つの等級に分けられている。このうちC類以下の取引は生体的特徴を認証方式とすることができるが、現在の法規では業者が携帯電話に内蔵された指紋識別機能を用いることが認められておらず、業者は自ら指紋を収集し、設計したアプリケーションで認証を行っている。

 銀行組合は、金融監督管理委員会に法改正の提言を出す見通しだ。『電子決済機構情報標準および安全管理作業基準方法』で言及されている生体的特徴による身元認証システムについて、取引の便利性を高めるため、スマートフォン内蔵の指紋識別機能による認証を可能にする立案を検討している。

 ユーザーにとっては、指紋情報を電子決済機構に提供すると高度なプライバシーが外部に漏洩する恐れがある。現在、台湾の電子決済取引の多くはAB類であるため、ユーザーは固定パスワードとショートメッセージのワンタイムパスワードによる認証を選択することが多い。拓の統計によれば、指紋識別のスマートフォンでの普及率は約5割であり、加えて国際的なモバイル決済ブランド(Apple PaySamsung Payなど)はいずれも携帯電話内蔵の指紋識別で身元の認証が可能である。今回の法改正で利便性が向上すれば、台湾のローカル決済ブランドの発展を大きく後押しする可能性がある。

 各国の発展を比較すると、現在、欧米の国々は身元識別の安全性に対する規範化を重視している。一方、新興国では従来型の金融サービスが全面的に市場に浸透していないため、インターネット金融の発展とファイナンシャル・インクルージョンの推進が急速に進んでいる。加えて、個人のプライバシー保護の法規が厳格でないこともあり、生体識別技術の金融への普及では逆に欧米の国々をリードしている。

Ø  中国のネットキャッシングが規範化の段階へ本格突入

 中国のネットキャッシング(以下、ネットキャッシングという)は急速に台頭するとともに大きく成長したため、銀行業監督管理委員会が今年8月に『ネットキャッシング情報仲介機構の業務活動情報公開の手引き』を発布し、ネットキャッシング機構の情報公開基準を統一した。ネットキャッシング機構に公開情報の保管、管理および審査情報を開示することを求めるとともに、毎月最初の5営業日内にオフィシャルサイト、微信の公式アカウント、携帯電話アプリといったインターネットチャネルにおいて貸借残高、件数、期日超過金額などの経営状況を開示するよう要求している。また、借り手の信用調査報告における期日を超過している借入金およびその他プラットフォームの借入金の状況を貸し手に開示するよう要求することで、1人の人が多く借り受けてしまうことや複数の借入先から借り入れてしまう状況に歯止めをかけなければならない。

 20177月、中国のネットキャッシング機構で正常に経営している業者数は2,090社に上り、銀行と直接預託の合意を交わしている正常な運営プラットフォーム数は約700社だが、直接預託システムにオンライン接続しているプラットフォーム数はわずか450社であり、全体としては現在、銀行の預託面で監督管理規範に合致しているプラットフォーム数はプラットフォーム総数の1割に届かない。今回の監督管理の実施は、ネットキャッシング業者のコンプライアンスコストを大きく上昇させるが、ネットキャッシング産業が業務の透明化を進める上でプラスに働くと予想される。

 中国のインターネット金融協会が201610月に制定した『インターネット金融情報の個別ネットキャッシングソーシャルレンディング開示基準』には96項目の開示指標が定められているが、基準は業界の自主性に委ねられており、監督管理に効力がなく実施状況が芳しくない事態を招いている。また、単のネットキャッシングソーシャルレンディング機構にとっては、借り手がそののネットキャッシングソーシャルレンディングプラットフォームでの借り入れ借入状況を意図的に隠すことで、複数の相手先からを行う状況が存在する可能性が残る。

4.     電子商取引産業

Ø  物流倉庫保管のロボット化がトレンドに

 Amazonは、アメリカ各地の物流倉庫にKiva運搬ロボットを導入することで物流処理効率を高めるとともに、物流自動化技術を積極的に開発している。中国の京東も物体把持ロボットを独自に研究開発している。現在は上海の物流センターで試験を行っており、2018年には全自動無人倉庫を設立する可能性がある。アリババの関連企業である菜鳥網路はスマートロボット倉庫を構築し、20178月から正式に運用を開始している。倉庫内には100台に上るAGV運搬ロボットが互いに連携し、あるいは単独で注文の集荷任務をこなしている。アリババはSAIC MotorDongfeng MotorWeifang Rainchst Automobileといった中国の自動車企業と連携し、新エネルギー物流自動車を造り出し、スマート輸送を実現しようともしている。

 ロボットによるピッキングと運搬が必要とする速度は人のわずか半分であり、ロボットがピッキングを全面的に担うようになれば、電子商取引は人件費をさらに2割減らすことができる。ただ現在のところ、Kiva運搬ロボットは処理待ちの製品をピッキング担当者の前まで運ぶことができるが、分類、包装、出荷は行えないため、ピッキングロボットを進化させる技術開発が今後の発展の重点であることに変わりはない。

5.     ベンチャー産業

Ø  台湾メーカが無人航空機市場を攻略へ

 無人機市場の潜在的なビジネスチャンスは非常に大きい上、持続的に成長しており、2017年末には世界の無人機市場の売上高が60億米ドルに達し、2020年には112億米ドルを超えると見込まれる。今後数年は商業無人航空機市場の発展の余地が大きい。このため、カスタマイズ機種を持ち、システムインテグレーションや部品を提供可能な台湾メーカはいずれも積極的に参入を目指し、経緯航太、雷虎科技、田屋科技などの大手メーカがこぞって新技術を発表している。

 経緯航太がNECと提携協力した無人機の顔認識技術は、無人機の利用範囲を公共の安全、テロ対策任務などにまで広げるものである。田屋科技はスピーディーなカスタマイズというコアコンピタンスを持ち、可変ピッチ・マルチ回転翼を研究開発しており、専用の自動ナビゲーション飛行制御システムを搭載し、遠距離自動ナビゲーションを行う。雷虎科技は、同軸2ブレード無人機製品、高精度RTK (Real Time Kinematic)位置決め技術などを研究開発している。

 応用と市場のビジネスチャンスの面では、複数の台湾メーカが航空撮影・測量や農薬散布などの応用サービスに着目しており、特に農薬散布の応用サービス市場のビジネスチャンスは、従来の垂直上昇機構型の無人航空機を持つメーカにとって非常に有望である。台湾全土の農薬メーカは約12,000社であり、ほぼすべての農薬メーカが農薬散布のサービスニーズを持っていると見込まれる。従来の垂直上昇機構型の無人航空機による農薬散布は、作業効率が高い一方、農業従事者や作業者が農薬に接触する危険を減らすことができる。

Ø  台湾のAI発展の機会

 外部では台湾がAIを発展させることについて多くの批評がなされている。台湾は既にソフトウェア、インターネット、検索エンジン、ソーシャルネットワークなどの重大な変革を見逃してきており、AIを発展させる条件が不足していると考えられている。ただ、実際に価値と予測能力を備えたAIシステムを発展させるには、データの「質」と「量」こそが極めて重要である。AIシステムはどのような、そして、どのくらいのデータを必要とするのか。それにはまず「AIを用いてどのような目的を達成したいのか」を決めなければ答えられない。長期的な展望と計画がないまま、大量のデータを集めても、鍵となるデータがない、あるいは品質が不十分であるために、AIを発展させる利用ニーズに合致しない可能性がある。

 ビッグデータの価値を高めようとしている台湾メーカを例に取ると、その多くが大量のセンサーを配置して大量のデータを収集した後で、データが使いにくいことや価値のある分析を行うことが難しいことに気付く。目的に応じたデータの収集方式とセンサーの配置を体系的に計画しておらず、コスト資源をいたずらに消費している。

 AIの本質はサービスと製品を向上させる手段であり、AIを発展させて市場を開拓する前に、まずは優れたビジネスモデルを構築することこそ正解であると、拓考える。各産業に導入する過程では、まず産業のDomain Knowledgeと結びつけ、ビジネスモデルが市場競争力を備えているか評価した後、さらに目的に基づいてデータを収集し、アルゴリズム技術やハードウェアを組み合わせなければ、市場の開拓や実質的な経済効果を保証することはできない。

 

 

 

 

 

台北市政府産業発展局

発行日: 2017.10

 



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